日本におけるお墓事情、そして各地に残る歴史的なお墓
厚生労働省のデータによると、日本にある墓地は全国で80万か所以上あるとされ、その9割は個人墓地となっています。しかし、現在、ごく一部の自治体を除き、個人墓地の新設は認められていません。
昭和23年に墓地や埋葬法に関する法律が施行されるまでは、寺院の住職が個人名で墓地の経営許可を取得していました。それらの多くは、地方の山奥や人目に触れにくい場所にあり、廃止の申請をされることもなく忘れ去られてしまった墓地も少なくないようです。
そんな日本の墓地ですが、長い歴史の中で生き残ってきた墓地や霊園があります。
今回は、歴史に埋もれることなく現代に引き継がれた、特徴のある墓地霊園をご紹介します。
アイヌのお墓
現在のアイヌのお墓は、大抵の場合、日本中で見られる一般的な和式墓になっています。アイヌ様式のお墓が最後に作られてから、すでに数十年が経ったと言われています。
アイヌ様式のお墓とは、楢の樹などで造られた、クワと呼ばれる墓標を立てたもので、これは故人が無事にあの世へとたどり着けるための杖に見立てられているそうです。
木製の墓標が朽ちても、新しいものに替えることはなく、お墓参りをする習慣もありません。先祖の霊たちを騒がせてはならないという考えからですが、家ごと、村ごとに、先祖供養は頻繁に行われていました。
沖縄のお墓
日本の本土とは全く異なった雰囲気を持つ沖縄のお墓の特徴は、まず非常に大きいことが挙げられます。今でこそ本土のように公営および民間の霊園がありますが、歴史は浅く、琉球王国の時代が長かったため檀家制度がなく、寺院墓地も少数です。
かつて沖縄では、風葬という葬送方法が採られていました。火葬や土葬するのではなく、遺体を屋外に安置し、風化するのを自然に任せて遺骨の状態になるまで待つという方法です。そしてその周りに石を積み上げてお墓としたために、大きな室になったとされています。
17世紀から18世紀にかけては、琉球王国の士族用に、破風墓や亀甲墓が作られました。琉球王国滅亡後は、庶民の間にもこの様式が広まり、普及していきましたが、現在は火葬が中心となっています。
隠れキリシタンのお墓
幕府による禁教令は非常に厳しく、それは亡くなった人に対しても同じでした。墓石が西洋風の墓碑であった場合、遺族への取り調べののち、破壊されてしまったと言います。信者たちは幕府の目をかいくぐるため、洗礼名などを記すことはやめて、自然石を置くだけの質素なお墓にするなどして工夫したそうです。
長崎は浦上地区に残る経の峰共同墓地には、代官たちの迫害を免れたキリシタンのお墓が残っています。
華僑の共同墓地
華僑や華人の歴史は神戸や横浜の南京町を中心として、開国とともに始まりました。それに伴って、公共の共同墓地も設立されます。
さらに神戸から分化した京都華僑が生まれたことにより、萬福寺に京都華僑墓地が開設されました。一方、横浜外国人墓地に埋葬されていた華僑や華人たちは、中国人を埋葬する中華義荘(ちゅうかぎそう)に移されています。
中国人墓地には地蔵王廟と納骨堂があり、中国の商人たちの募金によって建てられました。
これらの施設は、横浜市指定有形文化財に指定されています。
各地に点在する外国人墓地
日本に住み、日本で亡くなった外国人のための墓地で、函館や横浜、軽井沢、大阪、神戸、長崎など、湾岸都市を中心として日本各地に点在します。横浜にある英連邦戦死者墓地は、戦没者専用の墓地です。
また、神戸市立外国人墓地は六甲山地の再度山山頂近くにある公園近くにあり、名勝地として数えられるほど美しい場所として観光客にも人気があります。
高野山墓地
織田信長や伊達政宗、武田信玄など、数多くの戦国武将が眠る墓地で、近年ではパワースポットとしても人気がある日本仏教の聖地です。奥行は2kmにもなり、世界文化遺産にも登録されたことから、外国人観光客の姿もよく見られます。
まとめ
その場所に古くから根付いた民族の、独特のお墓や埋葬法などをご紹介しました。
日本全国には、古い歴史を持つお墓や霊園が数多く存在します。中には観光地となっている場所もありますので、見学に出かけるのも良いでしょう。ただし、お墓ですので、くれぐれも節度を守って静かに見学することが大切です。
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