祖母のこと

祖母が亡くなったのは、私がまだ20代の頃でした。身近な人が亡くなった、初めての経験でした。

その日、当時働いていた会社に電話が来て、祖母が亡くなったことを知らされました。普段大人しい母が、泣き叫ぶようにそのことを電話口で伝えました。

それから急いで帰り、タクシーのおつりも断って家に入ると、祖母が布団に寝かされていました。晩年の祖母は、昼寝をしていることが多く、しばらくしたら、何事もなく起き出してきそうなほど、穏やかな寝顔でした。

その夜、お線香を絶やさぬよう母と私で祖母の横に座っていました。祖母は母の義理の母です。私たちはずっと同居していました。

「親不孝だったのよね」そう言って、母が指のささくれを私に見せました。

私はおばあちゃん子でした。両親は共働きで、やんちゃな私を叱ったり、学校に呼び出されて私と一緒に頭を下げるのも祖母の役割でした。

亡くなる前日の夜、私が疲れた素振りをしていたのか、祖母が大丈夫かと声をかけてきました。祖母は大変な心配性でした。その頃には、認知症の症状もあり、あまり言葉を発することもなくなっていました。

私は、”大丈夫だから、自分の体のことだけを心配してくれ”、と言い、肩に手を置くと、祖母は入れ歯を外すとまったく歯のない口を開け、声もなく大笑いしました。それが最後の思い出になりました。

あれから20年以上、毎年、お盆とお正月には、祖母が眠るお墓に行き、手を合わせます。

家族の健康や息子の受験のこと、どうか見守って欲しいと心に念じます。祖母の顔は、もうだいぶおぼろげにしか思い出せなくなりましたけど、きっと笑ってくれていると思っています。

幸い両親は健在ですが、私は長男なので、このお墓を継ぐことになるでしょう。でも、自分の息子のことを考えると、その先はどうするのかと考えるようになりました。

お客様のさまざなまご相談を伺いながら、日々、そんなことを思っています。