お墓参りをしていると、ふと他のお墓を目にしたときに家紋が彫られたものを見かけることがあります。家紋を入れているお墓と入れていないお墓がありますが、そもそも家紋はお墓の建立の際に必ず入れなければならないものなのでしょうか。
今後、お墓の建立を検討される際に参考になるよう、今回はお墓の家紋について詳しくご紹介していきます。
家紋とは
家紋は、日本独特の文化の1つで、自分の家や名字を表す紋章として使われてきました。現在ではその数なんと240種以上、5000紋以上にも及ぶと言われています。近年では個人だけでなく、企業のシンボルマークとしても使用されるようになり、現在もなお増え続けています。
家紋の起源は、平安時代後期と言われており、貴族が各家固有の目印として家紋を利用し始めるようになったのがきっかけでした。それがやがて、公家などの一部特権階級が独自の紋を牛車などに付けて披露し歩き回るようになります。これが現在の家紋に通じる起源と言われています。
源平の戦いが激しくなってきた平安時代末期に、武家には家紋が伝わり、戦場で自らの働きを証明するために、さらには名を残したいという自己顕示のために各々が考案し図象を旗幕や幔幕にあしらったことが始まりです。敵味方の区別するために家紋を入れた軍旗を掲げていました。
鎌倉時代中頃になると武家にも家紋文化が定着し始めます。江戸時代になると合戦がなくなり、士農工商が確立されたことをきっかけとして一般庶民にも家紋の使用が広がっていきました。この頃、一般庶民は名字の公称を禁止されていたのですが、家紋の使用には制限がなかったため、家紋は家の標識として使用されるようになります。
ちなみにヨーロッパではいまだ一般庶民が家紋を持つことが許されていませんので、家紋は日本独特の文化なのです。ただ、現代では生活スタイルが欧米化されたことによって、家具や衣装に家紋を付けることはなくなりました。
なぜ墓石に家紋を彫るの
元々は墓石に家紋を彫るような習慣はなく、合戦の際の旗印や着物、持ち物に入れることが通例でした。家紋を墓石に彫るようになったのは江戸時代からです。
江戸時代には合戦がなくなったことで自らの血統を周りに示すことができなくなったため、墓石に家紋を入れるようになったと言われています。
さらに明治時代になると身分制度がなくなることで家紋を彫る家が増えました。
当家の家紋の探し方
お墓にいざ家紋を彫りたいと思いたっても、自分の家紋がわからないというケースもあります。家紋は必ずしもどこの家庭にもあるというものではなく、中には家の識別の必要がなかった地域には、家紋がないという家もあるのです。ただ、多くの家に家紋は存在していますので、もし探したいという場合は、まず、本家に尋ねてみるのが一番です。
それでわからない場合、本家の菩提寺に尋ねるか、家を意識する墓石や仏壇、着物、調度品を確認すると家紋が記されているケースが多いです。仏壇の場合、本体や位牌、過去帳に彫られていることがありますので、チェックしましょう。
お墓に家紋を入れる必要性
家紋を入れているお墓と入れていないお墓がありますが、実はお墓には特に家紋を入れる必要はありませんから、どちらも混在しているというわけです。江戸時代に血統を示すためにお墓に家紋を彫るようになったこともあり、特に必要なものではないのです。
すでにご紹介している通り、家紋を持たない家もあります。さらにお墓のサイズによっては家紋を入れることができないケースもあります。
ただ、注意点として、どうしても家紋を入れたいという場合、同輩の親族とよく相談する必要があります。たとえば、配偶者の家柄が敵対している武家だったなどの場合、敵の家紋を使うのを嫌がるケースがあるからです。
まとめ
このように、家紋には古くからの各家の血統を示すための印であることがわかりました。ただし、ご紹介したように必ずお墓に家紋を入れる必要はありませんので、お好みで彫ることができます。
家柄を誇りに思う方、世界的にも美術性の高いデザインとして認められている日本の家紋は、もし入れることができるのであれば、次の世代にも受け継いでいくという意味でも入れてみてはいかがでしょうか。
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